田舎のしがらみ・依存と愛情で果てた家族の結末が辛すぎるのに尊い

祖父の初盆のため、父の故郷・横溝町(よこみぞちょう)へ戻って来た赤崎蛍は、ミソハギ踏切の先に住んでいる初恋の相手・小夜と久しい再会を果たす。
以前より少し幼くなったような、解放的になったような雰囲気の彼女に癒され、うろ覚えな思い出と淡い想いを馳せた蛍は親戚から衝撃的な事実を知らされる。
既に小夜は『一家心中』という悲惨な事件に巻き込まれ亡くなっていること。
蛍が出会った小夜は何者なのか?
どうして小夜と小夜の家族は『心中』を選択してしまったのか?
周りが小夜たちのことを語りたがらないのは何故か?
……止まっていた時間が今、動き出す。
心中事件に関わった人物全員の時間が。
Contents
「ミソハギ踏切で待ってる」の基本情報
■ジャンル■
田舎で起こった一家心中の真実を知る切ない脱出+ノベルゲーム
プレイ時間/約6時間
■キーワード■
脱出ゲーム・謎解き・衝撃の結末・閉鎖空間・田舎・闇が深い・呪い・家族
■オススメポイント■
- 一見、平和な田舎で起こった事件の真相がリアルにありそうで戦慄しつつも、その中に愛情や優しさが垣間見えるシナリオ
(田舎だからこその関係性・環境が良くも悪くも描写されている部分にも注目) - 謎解きが苦手なユーザーでも進めやすい救済処置が入った脱出パート
- キャラクターが抱える過去・感情が多彩なため、様々な関係性や考察が楽しめる
■ストーリー性について■
人生に憂いを感じている大学生の蛍が久しぶりに田舎に帰り初恋の幼馴染に出会ったら、実はその幼馴染は既に亡くなっていて…からはじまるミステリー系のシナリオ。
やや陰惨な描写はあるものの、所々にコメディ(ラブコメ含む)もあるため、鬱一辺倒でないのが魅力的。
■プレイのしやすさ■
ノベルパート・探索パート・脱出パートを行い、シナリオを進行していくタイプ。
基本的に探索パートは良い意味でシンプル、脱出パートは広告視聴無しでヒント・解答が見れる救済処置があるため、話に集中しやすい。
■課金要素■
本編は無料で最後までプレイ可能。
(広告の視聴無し)
登場キャラクターの掘り下げ話など+αな番外編が課金要素としてあり。
「ミソハギ踏切で待ってる」ここが面白い!
幼馴染との心温まる再会が、数時間後に一変する皮きりに引きこまれる

本編は主人公・赤崎蛍が祖父の初盆のため、小学校以来な田舎へ帰省するところからはじまります。
蛍はある悩みを抱えている上に、恋人と別れたばかり(しかもキレイな別れ方ではない)で穏やかではない心情でしたが、久しい親戚たち・初恋の子との再会に固まった心が少しだけほぐされていくことに。
特に蛍の気持ちを大きく動かしたのは、
一人で田舎を探索中に出会った初恋の相手・天野小夜の存在でした。

ミソハギ踏切の先にある一軒家に住む小夜は蛍の記憶よりもずっと純粋で愛くるしい姿で出迎えてくれます。
(※小夜の純粋さは後の大きなフラグに)

帰宅した蛍は親戚に小夜の件を告げると、誰もが表情を固め困惑。
その態度に混乱する蛍でしたが、その原因は至ってシンプルでした。


既に小夜は故人であり、
小夜を含む天野家は一家心中事件を起こし、全員この世にはいない。
実際、小夜のいた家は蛍以外が行くと荒れ果てた空き家があるのみ。
なら、自分が会った小夜は何者なのか?
疑問符を打ち消すべく、蛍は再び、ミソハギ踏切を渡り、小夜の家へ。
そこで蛍は小夜の姉・瑞穂から親戚たちから聞いた話が本当だと知ります。

更に情報を得ようとした蛍は瑞穂に「小夜・瑞穂の両親はどうしているのか?」と問いますが、温厚だった瑞穂の態度が急に変わり……

前半の穏やかムードが一気に崩れて豹変するシーンは、推理系ノベルゲー好きには一気に引きこまれるポイントです。
蛍と小夜のほのぼのとした再会を楽しんだ矢先に、とんでもない真実を告げられ、それが本当だと分かった瞬間に気持ちが凍りつく心変わりはぜひプレイをして体感して欲しいところです。
真実の欠片を集める度に心が痛くなる一家心中の真実

初恋との再会が形容し難い事件(?)となった蛍は小夜が亡くなった一家心中事件について調べだします。
そこで蛍は小夜たちが周囲から村八分に近い扱いをされていたことや、家庭内の歪みを知っていきます。
同時に、一家心中事件が原因で時が止まり続けた人物たちと奇妙な絆で結ばれていくことに…


何か一つが狂わなければ起きなかった、誰が悪いのかが分からなくなるおぞましい事件。
全てのピースが揃った時、蛍が小夜に対して『できること』とは……!?
ナチュラルに語られる差別問題と差別との決別が心に来る

シナリオを進めて行くにあたり、プレイヤーの胸を定期的に抉るのが差別問題。
小夜の家族は、ある理由から村八分にされていましたが、小夜自身もデリケートな部分が原因で虐めを受けていました。
田舎という環境だからこそ起こる差別、他の地域でも起こりえる差別。
双方が各キャラクターの口から自然とでる差別関連の台詞は他のノベルゲームでは味わえない気持ちにさせてくれます。
また、親戚の女の子・リリィもかつて心無い差別で苦しんだ一人。
リリィが差別で傷つき、母親のお陰で立ち直った話や、年配の人物たちの差別的な言動で再び傷つくシーン(+そこからリリィがどう差別する人物と付き合っていくか)は小夜の一家心中関連とは別の苦さと深みを与えてくれます。
クリア後もたっぷり楽しめるエクストラシナリオ+α

本編クリア後は、もっと『ミソハギ踏切で待ってる』の世界観を知れるエクストラシナリオを楽しむこともできます。
要課金要素(1パック/120円)ですが、120円とは思えないボリューム量でした!
※有料シナリオのため、詳細については割愛します
特に小夜の姉・瑞穂と瑞穂の元恋人・信哉のストーリーは本編で二人の関係性に泣いた方にはオススメ。
(+信哉視点の難しい脱出パートも追加で楽しめます)
更にsweet ampouleさまが定期的に会報誌・あまやくプレス2019年夏号では、没になったED(製作者さまいわく、かなりヤバいやつ)と読み切りSSがも読めるので、気になる方は↓のリンク経由でチェックしてみてください。
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プレイした感想(少しネタバレあり)
差別問題やデリケートな類が絶妙に交り合ったシナリオに心が痛みながらも、それらに向き合うキャラクターたちの姿にとても惹かれました。
特に小夜の絶対に笑えない過去と蛍が小夜に『できること』についての答えを出した部分と、節子さんとリリィの交わることのない差別への認識関連が印象に残りました。
色々な意味で田舎という背景設定を活かしている部分も大変好み。
コメディーパートにもそれを絶妙に含めてくるから怖い…(褒め言葉)
周囲がやたら祈里ちゃんプッシュするのってあの背景だからこそかと。
蛍がモテモテな設定は最初こそ「ラノベ主人公か!!!」と突っ込みたくなったものの、よくよく考えると、閉鎖的な空間で住む女の子たちにとって蛍の存在は惹かれやすい(田舎に染まり切っていなく、それなりに都会感があってガツガツもしていない、しかも若い)ように見受けられました。これもあの背景があるからこそのモテさ的な。
信哉は瑞穂一筋(引きずっているともいう)だし、中村さんはフリーダムだし、勇気は既婚者だし、ヤスはアレだしな!!!
一家心中関連は予想していたのと全然違った上に、さらっとエグい設定を織り交ぜて来て「sweet ampouleゲーのテキストはやっぱり凄い…」と改めて感じた次第です。
(あと少しだけエ●スな文章もありましたら、こちらもさりげなく登場して「え!???いま、貴方とんでもないこと、言いましたよね!?」となりながらログを見直しました)
いくつも重なった問題が一つでも無かったら小夜たちは違う未来を歩めたのかなどを考えると切ない……
うつ病関連は、田舎うんぬん関係なくリアルに似たようなケースがありそうだなと寒気がするくらい衝撃的でした。
また、心中事件に様々な形で関わった人たちの引きずる度合いの振り幅が全員違うのもとても興味深かったです。
(中村さんと祈里ちゃんの後半で判明する心情が個人的に刺さりました)
余談ですが、終盤で見れるカラオケ大会のパートナーはゲンさんにしたのを、この場でお詫びします。
祈里ちゃん、ごめん…でも蛍&ゲンさんのやつ、めちゃくちゃ笑いました。
(ぬるっとヒロイン二人の中に混ざるゲンさんがツボりすぎて選んでしまった)

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